グローバルナビゲーションへ

本文へ

フッターへ



サイトマップ

TOP >  市民公開講座 >  「タバコの常識、ウソ・ほんと」

「タバコの常識、ウソ・ほんと」


講師:大和 浩氏
産業医科大学 産業生態科学研究所
労働衛生工学教室 助教授
 私も今年の6月20日で禁煙丸7年になります。ついに8回目の禁煙で最終解脱しました。過去にタバコを吸っていて、大変苦労してやめた人間ですから、吸っている人の立場もわかりますし、禁煙してからは吸わない人の苦しみがよくわかります。
 きょうのタイトルは「タバコの常識、ウソ・ほんと」です。まず、初級編として海外のタバコ事情、軽いタバコも体に悪い、空気清浄機では分煙出来ない、ことを紹介します。
 そして上級編として、実はタバコ対策というのは、吸う人への働きかけではなく、吸わない人への働きかけの方が大切である、ということを話します。このような講演会に来る人の9割が非喫煙者です。いちばん聞かせたい喫煙者は来ないものです。ですから、吸わない人たちが力を合わせて、喫煙しにくい環境づくりを始めることが最も有効なタバコ対策なのです。
 ブラジルのタバコのパッケージです。キャメルの裏側には「タバコをやめられないのは依存症」であることが写真入りで印刷してあります。このパッケージには「インポテンツの原因」、これには「未熟児の原因」と書かれています。この赤ちゃんは多分、500グラムぐらいの超未熟児でしょう。大変ショッキングな写真がパッケージに描かれています。
 これはカナダのタバコです。喫煙は「肺機能が低下をする肺気腫の原因」、「心筋梗塞の原因」となることが写真入りでタバコのパッケージに印刷されています。外国に比べると日本ではいまだに「あなたの健康を損なうおそれがあるので吸い過ぎに注意しましょう」という不明瞭な文章しか書かれておらず、「タバコを吸うと病気になりやすくなる」という情報が一般の人に伝わっていません。
 さて、最近の自動販売機を見るとよくわかりますけれども、7割から8割が軽いタバコになっています。このコマーシャルの中で一番大きな文字は「1」という数字です。マイルドセブンという銘柄よりも「1mg」であることの方が強調されています。軽いタバコは喫煙者に「タールが軽ければ健康被害が少ないであろう」という期待を抱かせます。
 この1ミリグラムというタールの量は機械が測定します。軽いタバコのフィルターには小さな穴がたくさん開いています。この穴から空気がたくさん漏れ込んでくるので、機械が測定する場合はタールの量が小さく出るだけなのです。
 このスライドは厚労省のホームページのデータをもとに作りました。青いグラフがパッケージのタール表示量、赤いグラフは人間が喫煙した場合のタール吸収量です。機械の測定値よりも実際の喫煙による吸収量の方がずいぶん多いことがわかります。確かに軽いタバコではタールとニコチンの量は減ります。でも、1mgだからといって普通のタバコの10分の1にはなりません。1mgのタバコは実際の喫煙では7mgに相当します。こういう事実を非喫煙者が勉強して、タバコを吸う人に「軽いタバコを吸うぐらいならやめなさい」と忠告していくことが私たちタバコを吸わない者の大切な役目です。
 最近、このような空気清浄機をあちこちで見かけます。この分煙カウンターを置けば「煙が吸い込まれて空気がきれいになる」と多くの人が勘違いしています。これが全く役に立たないことを実験的に証明しました。確かにスライドのように吸い込み口に煙を近づけていくと吸います。しかし、煙を吸う範囲はたった40センチだけです。
 ところが喫煙者は空気清浄機を中心として半径3メートルぐらいはタバコを吸って良い場所と勘違いしてしまう。この空気清浄機を使う場合、カウンターに肘をついて、顔を40センチ以内に近づけてタバコを吸わないと吸い込まれません。少しでも離れてタバコの煙を吐く場合には、全く分煙していないのと同じことです。また、よしんば煙が吸い込まれたとしても、有害物質の9割が素通りすることもわかりました。
 四畳半ほどの閉鎖された喫煙室にカウンター型空気清浄機を置いて、粉じん濃度とガス状物質濃度を測定しました。まず粉じんがどの程度漏れているのかを確認するために、吸気口と排気口にそれぞれ粉じん計をセットしました。測定値を比較すれば空気清浄機を1回通過することでどのくらいの粉じんが除去され、どの程度漏れているのかがわかります。そして、部屋の隅で一酸化炭素濃度、シックハウス症候群の原因であるホルムアルデヒド濃度、臭いの強さ、つまり、ガス状成分の濃度を測定しました。
 まず、清浄機のフィルターを交換した翌日、どのくらいの粉じんが漏れているのか見てください。排気口の粉じん濃度は確かに吸気口の濃度よりも低くなってはいますが、粉じん濃度のグラフは全く同じ形ですから明らかに漏れていることがわかります。粉じんの平均濃度を計算すると吸気口で0.15mg/m3、排気口で0.05mg/m3ですから、メンテナンス翌日でも3分の1の粉じんが排気口から漏れていることがわかりました。
 メンテナンス11日後の測定では、吸気口の平均値が0.17mg/m3、排気口が0.11mg/m3ですから、7割の粉じんが漏れていました。多くの場合、清浄機は3から4ヵ月に1回しかメンテナンスをしません。4ヵ月使用すると9割の粉じんが漏れていました。
 次は、ガス状物質は全く除去できないことの証明です。黒いグラフが粉じん濃度です。狭い喫煙室の空気を繰り返し吸い込むわけですから、粉じんの除去能力が悪くても時間がたてば粉じん濃度は確かに下がってきます。しかし、厚労省の基準である0.15mg/m3を下回ることはありません。赤いグラフは一酸化炭素濃度です。清浄機のフィルターは有害なガス成分を全く除去していないことが分かります。ホルムアルデヒドも基準値を大幅に超えています。臭いセンサーのデータも同じで下がりません。つまり、ガス状成分は除去出来ないのです。
 これらの知識をもとに、嘱託産業医としてタバコ対策を実践した事例を紹介します。日立金属若松工場は溶けた鉄を鋳型に流し込んで、製鉄所で使う大きなロールをつくる金属加工業です。700人の職員のうち男性が9割、全体の喫煙率は平成11年で53%でした。63の職場があって57個の職場では分煙されていませんでした。アンケートでは、喫煙者のうちタバコをやめたい人が60%、やめたくない人が40%でした。
 産業医としてタバコ対策を進める手順は、まず、吸わない人に「受動喫煙、他人の煙も有害である」という情報提供することです。そして、分煙、つまり、タバコ臭くない環境づくりに協力してもらいます。事務室、会議室を禁煙とし、禁煙できないところは煙の漏れない分煙にしました。「労働衛生管理として受動喫煙対策をします」と正式な会議で産業医が発言すれば反対はされません。
 さらに、定期健康診断で全ての喫煙者に禁煙を推奨します。問診で「タバコは体に悪いから禁煙しよう。健康のために禁煙しよう!」と毎年声をかけます。そして、高血圧や高脂血症などの異常所見がある人には「他の人はともかく、あなただけは今タバコをやめた方がいいです」という強い言い方で禁煙を勧告します。そして、「タバコをやめたい」と言って診療所に来た人には、優しく禁煙サポートをします。
 これらの様子が昨年BS1で流れましたので、ご覧ください。

ナレーション:多くの企業では分煙に力を入れています。北九州市にある大手金属加工メーカーの工場です。徹底した分煙対策を進めています。この工場の従業員700人のうち、およそ半数が喫煙者です。社内を全面禁煙にすることは簡単ではありません。
総務課長:一生懸命働いてもらうためには、タバコを吸わなきゃだめだという人もいるわけですよね。そういう人にとって、タバコを取っちゃうとやっぱりいても立ってもいられない人がいますから、そこまでやっぱり会社としてできないんですよね。
ナレーション:タバコを吸わない人を煙から守るためにどうすればよいのか。工場では煙が漏れない分煙室をつくりました。換気扇のある場所にシートで覆ったボックスをつくったのです。ボックス型の分煙室を考案したのは、この工場の産業医、大和浩さんです。大和さんは4年前から従業員の健康管理や職場の環境整備に取り組んでいます。大和さんは従業員に禁煙を勧める一方で、職場の徹底した分煙に力を入れてきました。
大和:タバコの煙というのは、吸わない人にとってはすごく不愉快で、ストレスの原因になるものなのです。ですから、きれいな空気環境の職場で快適に作業できるような対策をとることが必要なのです。

 受動喫煙の8割程度をしめる副流煙には、本人が吸う主流煙よりも高い濃度で有害物を含んでいます。副流煙は低い温度で不完全燃焼するタバコから発生することが原因です。有害な副流煙を吸わされることによって、吸わない人の肺がんリスクが上昇することを証明したのが平山雄先生です。吸わない女性が吸わないご主人と結婚して、受動喫煙を受けなくても肺がんになるリスクを1とします。20本以下の喫煙者と結婚して茶の間や自家用車の中で受動喫煙を受けた吸わない妻の肺がんリスクは1.5倍、20本以上のヘビースモーカーと結婚した妻の肺がんは1.9倍に増えることが証明されました。
 これはアメリカの論文です。禁煙の職場で働く人でも肺がんになるリスクを1とします。分煙されていない職場で10年近く働くと肺がんのリスクは1.3倍、20年働くと1.4倍、30年以上働くと1.86倍に上昇します。こういうデータを安全衛生委員会などで見せます。そうすれば非喫煙者が「タバコ対策に取り組みましょう。少なくとも受動喫煙対策だけはやりましょう」と積極的になります。他人の煙でも危険なのだということを、非喫煙者に知らせなくてはなりません。そうすれば「ここで吸わないでください」という言葉にも力が入ってきます。
 日本人10万人を生涯観察して、どういう原因で早死にするのかを検討した松崎道幸先生のデータです。実は、まだダイオキシンで死んだ人は居ないのですが、ダイオキシンの危険性を1としたときに、ディーゼルが原因で早死にする日本人は300人、アスベストが460人、交通事故が1,000人となります。それに比べ、14,000人もの日本人が受動喫煙、他人の煙で早死にしていることがわかります。本人が喫煙する場合は、半数の5万人がタバコが原因で早死にしています。このスライドから私たちが取り組むべき対策の優先順位がわかります。それは、ごみ焼却場ではなく、ディーゼル対策でもなく、交通事故でもないのです。まず受動喫煙。同時に喫煙者を減らことが最優先課題なのです。
 快適職場の次に来るのは快適な生活環境です。私はタバコの煙に対するバリアフリーな社会の実現を提案しています。車いすの人のためにスロープのある施設が増えてきました。では、タバコの煙についてはどうでしょう。世の中にはタバコの煙で喘息発作が起こる人、つわりで臭いに敏感になっている人もいます。そういう人たちが気楽に立ち寄ることができる、タバコに対してバリアフリーな世界を目指さねばなりません。そのためには、灰皿を全部外に出すか、もしくは換気扇をつけて0.2m/秒以上の空気の流れを確保して煙の漏れない喫煙室を作るしかありません。禁煙区域に粉じんも臭いも漏れないことが分煙の最低条件です。「これができないなら灰皿は外に出せ」というのがタバコを吸わない人間の正当な主張です。
 喫煙室の構造は有害物を扱う局所排気では囲い式フードになります。開口部がドアとなります。通常のドアの面積は約2m2です。タバコの煙を漏らさないために必要な風速は0.2m/秒ですから、60秒×2m2×0.2m/秒=24m3/分の排気風量が最低でも必要です。
 この排気風量を発生させるには、台所と同じ直径25cmの換気扇が2台は必要です。喫煙室に換気扇が1台しかない場合には廊下へ煙が漏れます。スライドのようにパネルで喫煙室を作って窓枠に換気扇を2台つける。2台で30m3/分あればドアは無くても煙は漏れません。この喫煙室の内と外で粉じん濃度を測定しました。喫煙室の内側の煙は、外に漏れていません。「漏れない」ことが保証されて、はじめて喫煙室と呼べるのです。
 これも日立金属の喫煙コーナーです。喫煙コーナーをいくらパーティションで囲っても何の役にも立ちません。煙は上に上がるのですから、喫煙コーナーを天井から囲い込んでしまう対策が必要です。ガラスを外して換気扇を3台取り付けました。工場の休憩所は休み時間に喫煙が集中しますので、排気装置は余裕をみて3台、45m3/分としました。
 分煙前の粉じん濃度には喫煙により上昇していましたが、分煙により禁煙となった場所の粉じん濃度は全く変化していません。天井を囲い込んで換気扇をつけた喫煙コーナーは煙を漏らさないことがわかります。このような「漏れない分煙ができないなら灰皿を外に出しなさい」と吸わない人が強く言い続けていきましょう。
 日立金属では喫煙対策を分煙という環境づくりから始めて、同時に健康診断を利用して禁煙サポートをおこないました。その結果、53%の喫煙率がたった1年で48%に下がりました。2年目は変化なく、3年目の今年44%になりました。たった3年間で喫煙率が9%減少しました。日立金属だけで留めておくにはもったいないので積極的にアピールしているわけです。
 これまでのタバコ対策で私が感じたことは、いくらタバコを吸う人が多くても「受動喫煙対策」を錦の御旗にして対策は可能である、ということです。
 昨年、受動喫煙に関する法律ができ、平成15年5月に施行されます。あと2ヵ月です。第25条「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁、飲食店、その他多数の者が利用する施設を管理する者は、受動喫煙を防止するために必要な措置を講じなければならない」と記載されました。
 私たちはこれからタバコ臭い施設を見つけた場合は、健康増進法を根拠として大きな声で施設の改善を要求していかねばなりません。例えば、レストランでどのくらいの曝露を受けているのか見てみましょう。
 青いグラフは完全禁煙のコーヒー店の粉じん濃度です。共同研究者、東京大学の中田ゆりさんがスターバックスに粉じん計を持ち込んで測定しました。いくら混んでいてもタバコを吸わない店の中の粉じん濃度は0.01mg/m3です。全席喫煙可能なコーヒー店の平均濃度は0.37mg/m3。37倍も高い値でした。しかも、この余分な粉じんは発がん性物質であることが大問題です。
   では、スライドのようなレストランの半分を喫煙、半分を禁煙することに意味があるのか。粉じん濃度は喫煙席も禁煙席もほぼ同じ濃度です。例えば、プールの中で右半分をおしっこして良い区域、左半分はおしっこ禁止区域としているようなものです。おしっこ(喫煙)はちゃんとプールを出てトイレ(喫煙所)でしてください、というルールが必要です。
 さて、私は病院の関係者、学校の関係者からも「どうやって分煙したらいいですか」としばしば質問されます。「病院と学校は分煙してタバコを吸う場所ではありません」と明快に回答しています。「医師、教師としての自覚をもって屋内禁煙化を推進して、子どもや患者さんの手本になってください」と答えています。
 産業医科大学も平成14年 12月に全館禁煙になりました。唯一の喫煙場所は病棟の向かいの建物の軒先です。「吹きさらしではかわいそう」という意見が出て、風除けだけは作りました。屋外ですから換気扇は要りません。雨の日には病棟から移動するには傘が必要です。車いすでもちゃんとやってきます。当然、病院職員も屋外で喫煙します。
 昨年、和歌山県では公立学校が全て敷地内禁煙になりました。平成15年4月からは茨城県、宇都宮市、仙台市などの公立学校が禁煙になります。「敷地内禁煙の前例がある」ことを校長に伝えましょう。
 うちの息子たちが通っている光貞小学校の運動会です。私たち保護者が学校で受動喫煙の迷惑を被るのは運動会です。こうやって禁煙マークが貼ってあり、校庭は禁煙であることが表示してあります。そして、体育館の裏に喫煙所が設けてある。一見立派な対策ですが、ここに「はみ出し喫煙者」が写っています。つまり、学校の中に喫煙場所があるということが問題なのです。
 その年の秋、三男が通っている幼稚園の運動会です。「子どもの活動の場にタバコが要るのか」と言われたら、だれも反対できません。園内に禁煙マークを掲示して「園内は禁煙」と放送をくり返すだけです。喫煙場所は道路を隔てた駐車場の中でした。吸い殻をポイ捨てされては困りますので、灰皿として水を入れたカンは必要です。園内で吸えないことに対して苦情は一件もありませんでした。
 八幡西区の浅川公民館。子どもも参加する文化祭が開かれています。公民館に対して「子どもが来るのだから灰皿は撤去すべし」と目安箱に2回投書しました。すると、ロビーの灰皿は屋外に出ました。
 また公共の場所の事例です。非喫煙者の皆さんでも列車の喫煙車両の中がとんでもない環境であることは知っていると思います。喫煙車両に粉じん計を持ち込んで測ってみました。夕方7時台の博多発大分行き特急の喫煙車両の測定結果です。仕事が終わって博多で一杯飲んだ人たちが乗る時間帯です。乗客は100%喫煙者、席についた瞬間に一斉にタバコを吸うとこんな粉じん濃度になります。ピークは1.19mg/m3ですから厚労省の基準の9倍です。平均値も0.60mg/m3ですから4倍です。タバコを吸う人たちは仕方ないですが、車掌さんと車内販売のお嬢さん達にとっては働く場所です。こういう劣悪な作業環境を改善するためには市民の声が必要です。このデータは私のホームページでも公開してあります。
 タバコ臭くて嫌な思いをするのはタクシーです。熊本駅の構内タクシーは2年前、120台うちの22台が禁煙車でした。その後、新車は全部禁煙車にしているため、禁煙車は42台に増えたそうです。車両の3分の1が禁煙車になったことで禁煙車の予約が増え、売り上げも禁煙車の方が多いそうです。私たち非喫煙者がとるべき行動は、タバコ臭かったタクシーに乗った場合は「何月何日の何号車はタバコ臭かった」と苦情の電話を会社にかけること。それと、タクシーを呼ぶときに必ず「タバコ臭くないタクシー」を要求することです。私は携帯電話に自宅の周辺で見かけるタクシー会社の番号をすべて入力しています。運転手さんが車内でタバコを吸っていたら、すぐに会社に苦情電話をしています。すると最近、「運転手は車内でタバコを吸いません」というステッカーが貼られるようになりました。
 禁煙マークもおざなりではだめです。大牟田駅では階段のすべての段、全ての柱に禁煙マークが貼ってあります。これが大切なのです。
 最寄りの折尾駅は全然足らない。そこで、私が博多に出張するときに使う3番ホームには自分で禁煙マークをたくさん貼りました。禁煙マークがすぐに目につくことが吸いにくい環境づくりに役立つのです。
 私が勤める日立金属では、懇親会の禁煙が定着してきました。もちろん私が働く産業生態科学研究所の懇親会はすべて禁煙ですけれども、鉄工系企業の懇親会でも誰かが言い出せばちゃんと会場は禁煙になります。喫煙者はこれまで「会場で吸わないで」とお願いされたことがないだけなのです。非喫煙者がちゃんと発言することが大切なのです。職場の懇親会は職場の延長です。事務室を分煙・禁煙するのと同じように、懇親会も分煙。つまり会場内のタバコは迷惑であることを発言しましょう。どうせおトイレには行くわけですから「トイレの帰りに吸ってきてね」とお願いされれば、イヤとは言いにくい世の中になって来ています。禁煙懇親会を何回かやっているうちに、このスライドの人は禁煙しました。環境づくりが喫煙者の行動を変えるのです。非喫煙者が当然のごとく灰皿を片づけて、別の場所で喫煙できるようにしておけば、喫煙者は灰皿のところまで行きます。吸わない私たちが我慢する必要はありません。
 私が顧問を務めるヨット部は5年前に禁煙宣言を出しました。「クラブ活動中は絶対に吸うな、学生の間に禁煙しろ」と顧問命令です。この写真には私を含めて4人の元喫煙者が写っています。今年、どうしても禁煙できなかった学生が卒業して、めでたくヨット部は喫煙者ゼロになりました。私のような強力な推進者がいても5年かかります。皆さん、気長にやっていきましょう。クラブ顧問の願いは「レースで良い成績をとる」ことはもちろんですが、「喫煙しない医療人になってほしい」というのが一番の願いです。
 最後にギャグを1つ。タバコ対策は険しい顔をして、厳しい口調でやると嫌われます。ユーモアが大切です。これは昭和40年代の日本専売公社の「きょうも元気だ、タバコがうまい!」という有名なポスターです。これから濁点を除くと「きょうも元気だ、タバコかうまい(買うまい)!」となります。ちょっと見たらニヤッと笑ってしまうようなユーモアがタバコ対策には必要だと思っています。
 地道な活動が実を結び、いつの日か吸わない人が快適に生活できる日が来ることを信じて、我が心の師・アントニオ猪木の朗読による「道」、新日本プロレスの道場訓で私の話を終わりたいと思います。

平成10年4月4日、東京ドームで猪木の引退セレモニー、本人の声:
 「人は歩みをとめた時に、そして挑戦をあきらめたときに年老いていくのだと思います。
 
  道
 この道をゆけば
 どうなるものか
 危ぶむなかれ
 危ぶめば道はなし
 踏みだせば
 そのひと足が道となり
 そのひと足が道となる
 迷わずゆけよ
 ゆけばわかるさ
 ありがとう!!」

藤原:大和先生はプロレスの大ファンだそうで、たいへんおもしろいお話をどうもありがとうございました。